ステップ5:可視化と意思決定の迅速化 - Amazon QuickSight
今回のステップの概要とデータ分析パイプラインとの関連について
このステップでは、ステップ4でAthenaを使って分析したデータをAmazon QuickSightで可視化し、役割別に「誰が・いつ・何を実行するか」を即座に決められるダッシュボードを作成します。可視化を単なるグラフで終わらせず、意思決定と行動に直結させる運用を学びます。
データ分析パイプラインにとって、QuickSightは「作戦会議のホワイトボード」のような役割です。状況が変わった瞬間に全員が同じ指標を見て、迷わず次の一手を決められる状態をつくります。
このステップで学ぶこと
- QuickSightとAthenaの接続、データセット作成
- KPIダッシュボード(時系列・前日比・週次比)
- 役割別ビュー(経営・マーケ・SREなど)の設計
- しきい値ライン/条件付き書式で異常を即時把握
- 「本日のアクション」欄をダッシュボードに組み込み、行動を明文化
リソースの関わりと構成説明
- QuickSight:Athenaをデータソースにしたダッシュボード作成。SPICEにインポートする場合はサイズと更新頻度に注意。
- Athena:分析結果を提供するデータソース。パーティションを意識したクエリでコスト最適化。
- S3:クエリ結果と参照データの保管場所。権限はIAMロールで最小化。
実際の手順
このステップでは、実際のAWSコンソールでQuickSightを操作する代わりに、Amazon QuickSight DemoCentralというデモサイトを使用してQuickSightの機能を学習します。このデモサイトでは、実際のQuickSight環境を体験できるため、AWSアカウントを作成したり、料金を気にすることなく、QuickSightの機能を自由に試すことができます。
1. QuickSight DemoCentralへのアクセス
- ブラウザで以下のURLにアクセスします:https://democentral.learnquicksight.online/
- デモ環境の作成が完了するまで待ちます(通常、数分かかります)
- デモ環境が準備できたら、QuickSightのホーム画面が表示されます
【解説】QuickSight DemoCentralとは
QuickSight DemoCentralは、Amazon QuickSightの公式デモサイトです。実際のQuickSight環境を体験できるため、以下の機能を試すことができます:
- ダッシュボードの閲覧
- データセットの作成
- ビジュアライゼーションの作成
- 役割別ビューの作成
- しきい値ラインの設定
デモサイトには、様々なサンプルダッシュボードが用意されているため、QuickSightの機能を幅広く学習できます。
2. サンプルダッシュボードの閲覧
デモサイトには、様々な業界や用途のサンプルダッシュボードが用意されています。まずは、これらのダッシュボードを閲覧して、QuickSightの機能を理解しましょう。
- ホーム画面左のペインから「Dashboard Demo」を選択し、興味のあるサンプルダッシュボードを選択します(例:「Retail Sales」など)
- ダッシュボードを開き、以下の要素を確認します:
- KPIカード:主要指標がカード形式で表示されている
- 時系列グラフ:データの推移がグラフで表示されている
- 役割別シート:異なるビューが用意されている
- しきい値ライン:異常値を示すラインが設定されている
【解説】サンプルダッシュボードから学ぶこと
サンプルダッシュボードを閲覧することで、以下のことを学べます:
- ダッシュボードの設計パターン:どのようにKPIを配置するか、どのようにグラフを組み合わせるか
- 役割別ビューの実装:経営層、マーケティング、SREなど、異なる役割に応じたビューの作り方
- しきい値ラインの設定:異常値を視覚的に示す方法
- 条件付き書式:データの値に応じて色やスタイルを変える方法
これらのパターンを理解することで、実際のプロジェクトでQuickSightを使用する際の参考になります。
3. データセットの作成とビジュアライゼーションの作成
デモサイトでは、既存のデータセットを使用して、新しいビジュアライゼーションを作成することもできます。
- ページ左部分のグラフに鉛筆が書かれているマークから編集画面を開きます
- 既存のデータセットを選択するか、新しいデータセットを作成します
- ビジュアライゼーションエディタで、以下の操作を試します:
- KPIカードの作成:主要指標をカード形式で表示
- 時系列グラフの作成:データの推移をグラフで表示
- しきい値ラインの設定:異常値を示すラインを設定
- 条件付き書式の設定:データの値に応じて色やスタイルを変更
【解説】ビジュアライゼーションの作成ポイント
QuickSightでビジュアライゼーションを作成する際は、以下のポイントを意識します:
- 目的を明確にする:このビジュアライゼーションで何を伝えたいか
- 役割を意識する:誰がこのビジュアライゼーションを見るか
- 行動に結びつける:このビジュアライゼーションを見て、次に何をすべきか
これらのポイントを意識することで、単なるグラフではなく、意思決定に役立つダッシュボードを作成できます。
4. 役割別ビューの作成
デモサイトでは、役割別のビューを作成することもできます。
- ページ上部の「Add sheet」で新しいシートを作成します
- シート名を役割に応じて設定します(例:「経営ダッシュボード」「マーケティングダッシュボード」)
- 各シートに、役割に応じた指標を配置します
【解説】役割別ビューの重要性
役割別にビューを分けることで、各担当者が必要な情報だけを素早く把握できます。経営層は売上や利益などの経営指標を、マーケ担当はチャネル別のパフォーマンスを、SREはシステムの健康状態を、それぞれ見ることで、意思決定が速くなります。
また、役割別ビューを作成することで、「誰がどの指標を見て動くか」が明確になります。これにより、可視化が行動に直結します。
5. 実際のプロジェクトでのQuickSight使用(参考情報)
デモサイトでQuickSightの基本操作を学んだ後、実際のプロジェクトで使用する際は、以下の公式ドキュメントや解説記事を参考にしてください。
AWS公式ドキュメント:
AWS DevelopersIO(技術ブログ):
このステップで何をしたのか
QuickSightで役割別のダッシュボードを構築し、異常を即座に把握し行動へ落とし込める可視化基盤を整えました。可視化を「意思決定と実行の起点」として運用する前提を学びました。
データ分析パイプラインでどのような影響があるのか
この構成により、データ分析パイプラインは可視化を通じて意思決定と行動を迅速化できるようになりました。役割別のKPIが一元化され、判断が速くなります。閾値可視化と書式強調で異常を見落としにくくなり、「本日のアクション」を明文化することで、可視化が行動に直結します。
技術比較まとめ表
| 技術領域 | AWS | オンプレミス |
|---|---|---|
| BIダッシュボード | Amazon QuickSight サーバーレス、自動スケーリング、役割別ビュー | Tableau、Power BI 自前でサーバー構築・運用、ライセンス管理が必要 |
| データ接続 | Athena、RDS、S3など複数データソースに統合接続 SPICEによる高速化 | データソースごとに個別接続設定 データ更新の管理が複雑 |
| コスト構造 | 使用量に応じた従量課金 SPICE容量に応じた料金 | 固定ライセンス費用 サーバー運用コスト |
学習において重要な技術的違い
1. サーバーレスとセルフマネージドの違い
- AWS:サーバーの構築・運用が不要。自動的にスケーリング
- オンプレミス:自前でBIサーバーを構築・運用。ライセンス管理が必要
2. データ接続の統合性
- AWS:複数のデータソース(Athena、RDS、S3など)に統合接続可能
- オンプレミス:データソースごとに個別接続設定が必要
3. コスト構造
- AWS:使用量に応じた従量課金。SPICE容量に応じた料金
- オンプレミス:固定ライセンス費用とサーバー運用コスト
4. 共有とアクセス制御
- AWS:IAMによる細かいアクセス制御。ダッシュボードの共有が簡単
- オンプレミス:自前でアクセス制御を実装。共有の管理が複雑
実践チェック:画面キャプチャで証明しよう
- QuickSight DemoCentralにアクセスし、デモ環境が作成されている
- サンプルダッシュボードを閲覧し、KPIカードや時系列グラフを確認している
- 役割別シート(経営/マーケ/SREなど)が用意されていることを確認している
- 閾値ラインや条件付き書式で異常が強調されていることを確認している
- デモサイトでビジュアライゼーションを作成する操作を試している
提出方法: 各項目ごとにスクリーンショットを撮影し、まとめて提出してください。 ファイル名やコメントで「どの項目か」が分かるようにしてください。
構成図による理解度チェック
このステップで作成したリソースを、データ分析パイプラインの構成図に追加しましょう。
なぜ構成図を更新するのか?
構成図を更新することで、データ分析パイプラインの全体像を視覚的に理解できるようになります。また、各リソースの関係性やデータの流れを明確にすることで、システムの動作を深く理解することができます。
- 可視化の流れの理解: QuickSightがAthenaを参照し、データを可視化する流れを視覚的に把握できる
- リソース間の関係性: QuickSight、Athena、S3がどのように連携しているかを理解できる
- システム全体の把握: パイプライン全体の構造を一目で理解できる
構成図の書き方
ステップ4で作成した構成図をベースに、以下のリソースを追加してみましょう。
- Amazon QuickSight: 図の右側(可視化側)に配置。データを可視化する場所として表現
- データの流れ: AthenaからQuickSightへの矢印(データセット接続)を描く
- ダッシュボード: QuickSightからユーザーへの矢印(可視化結果の共有)を描く
💡 ヒント: 構成図では、データの流れ、メタデータの流れ、可視化の流れを区別して表現すると理解しやすくなります。また、各リソースの役割を短い説明文で補足すると、より分かりやすくなります。
理解度チェック:なぜ?を考えてみよう
Q1. なぜデモサイトを使ってQuickSightを学習するのでしょうか?実際のAWS環境と比較して、どのようなメリットがありますか? Q2. なぜ役割別のビューを分けると意思決定が速くなるのでしょうか? Q3. なぜしきい値ラインや条件付き書式を設定することが重要なのでしょうか?
今回のステップで利用したAWSサービス名一覧
- Amazon QuickSight:BIダッシュボード
- Amazon Athena:分析クエリ
- AWS IAM:アクセス制御